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筋力UPや睡眠に影響する時間栄養学とは?食事が体内時計に影響するメカニズムと朝食の重要性

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お仕事、子育て、介護など 、40〜60代のオトナ女子は自分の時間をなかなか自由には取りにくいですよね。気づけば家族や仲間のことを想うあまり、自分のことを後回しにして頑張りすぎてしまい、不規則な生活の中でダルさや疲労感を感じているのではないでしょうか。

医学的研究でも不規則な生活で体内時計が乱れると心や身体にさまざまな不調が起こりやすくなることが分かっています。

一般的に「体内時計」というと起床・就寝のリズムをイメージする方が多いかもしれませんが、実は「食事タイミング(栄養摂取)」も体内時計に影響することが分かってきたのです。

そこで今回の記事では、知ることによって筋力UP や減量・更には睡眠改善にも役立つという「時間栄養学」について、早稲田大学の柴田重信教授に教えていただきました。

この記事でわかること

時間栄養学ってどんなこと?
体内時計が乱れると何が起こるの?
体内時計をリセットする朝食の重要性

時間栄養学とは?

「時間栄養学」とは、もともとあった「時間薬理学」をもとに作られた言葉です。

「時間薬理学」とは、薬を飲む時間を決める薬理学のこと。お薬を処方されると「朝・夕の食後に1錠」「寝る前に1錠」など、服用タイミングが決められていますよね。

これと同じように、食事に関しても「食べる時間(内容)によって身体への作用が変わるのではないか」と考えられ、研究が進められているのが「時間栄養学」です。

時間というのは、体内時計が作っているリズムのことを示しています。そのため、時間栄養学よりも「体内時計栄養学」「リズム栄養学」という言葉にする方が、より分かりやすいかもしれませんね。

時間栄養学とは体内時計に基づいた食科学のこと

「時間栄養学」について考えるとき、まずは2つの方向性があるということが大事なポイントになるんです。

1つは「時間が栄養に影響するのではないか」という方向性。もう1つは、逆に「栄養が体内時計に影響するのではないか」という方向性です。

「時間・食事(栄養)の相関性」の具体例

ちょっとはじめは少し専門的なお話になりますが、まずは「時間栄養学」ではなく、「時間薬理学」の例を挙げてみましょう。

例えば「ラメルテオン」という薬を服用すると、睡眠ホルモン「メラトニン」の受容体を刺激します。「メラトニン」は体内時計を調整する働きがあるため、薬が体内時計に影響を与えているのです。

逆方向で考えると、コレステロールを下げる「スタチン系の化合物」という薬品があります。これはコレステロールを合成する酵素が夕方から夜にかけて高くなるため、夕方〜夜に飲むことで高脂血症や脂質異常症の治療につながる薬になります。

ここで柴田教授は、食事や栄養にも「時間薬理学」と同じような関係があるのではないかと考えました。そして研究を進めた結果、ヒトやネズミの研究で食事が体内時計に影響することが具体的に分かってきたそうです。

時間栄養学よりも「時間食科学」の方が適切

柴田教授は、「時間栄養学」というよりも「時間食科学」の方がより適切な表現だといいます。

私たちは食事をするとき、栄養として食べるわけではありません。食べた結果、そこに栄養があって身体にさまざまな作用をもたらしているんです。

食科学として考えると、例えば調理法でも身体への作用が変わると考えられます。すると「朝向きの調理法」「夕方向きの調理法」なども考えられるというわけです!

ただし、もともと「時間薬理学」という言葉が定着しているため、それに合わせる形で「時間栄養学」という言葉になって広まっています。

食事と体内時計の関係

食べ物が体内時計を動かすことは、ネズミの実験で非常に多くのデータが取れています。その後、ヒトの調査でも同様の結果が分かってきたそうです。

地球の周期と体内時計の周期にはズレがある

まず「時間栄養学」を考えるとき、体内時計について知っておく必要があります。

地球の自転周期はほぼ24時間です。それに対してヒトの体内時計は、24時間よりも15〜30分ほど長くなっています(個人差があります)。

地球の周期に合わせて生きるために、私たちの体内時計は調整しながらつじつまを合わせているんです。体内時計が乱れると、地球の周期に対して少しずつ後ろにズレてしまいます。

この体内時計が乱れる状況は、人体にとって様々な不調や病気を呼び起こしてしまうことも医学的にわかっています。つまり、体内時計を乱れないようにリセットすることが健康長寿には大切なのです。

体内時計には「脳の時計」「末梢の時計」の2種類がある

体内時計を詳しく調べていくと、「脳の時計」「末梢時計」の2種類があることが分かりました。

起床してから朝日を浴びると、体内時計がリセットされると聞いたことはありませんか?これは、光が「脳の時計」に強く作用している状態です。

それに対して「末梢時計」は、肝臓や膵臓、筋肉ど末梢臓器に発現しています。食事に影響されるのは、末梢臓器に発現して(確認されて)いる「末梢時計」です。

朝食をとると「末梢時計」が朝を認識する

朝食をとると、「末梢時計」が体内時計を一時的に短くして朝に合わせます。

とくに「末梢時計」が朝を認識するのは、炭水化物を食べたときです。次にタンパク質が重要な役割を果たし、体内時計が調整されて末梢臓器が活動をスタートさせます。

このように、食べることで体内時計に影響するという方向性が分かってきました。さらに、食事の内容や栄養によって体内時計への影響が変わることも分かってきたのです。

体内時計が乱れるとどうなるの?

生活リズムの乱れやシフト勤務などで体内時計が乱れると、心と身体にさまざまな不調が現れます。

また、一般的に社会全体は朝〜昼型に向いたような社会構造になっているため、体内時計が夜型の方も問題が起こりやすいようです。

夜型は自分だけの世界で生きられる方はそんなに問題はありませんが、社会とつながりを持ち始めると調子が悪くなります。

生活習慣病のリスク増加

ヒトではできませんが、ネズミなら時計遺伝子がないネズミでの実験を。

そこで腎臓の時計だけ働かないネズミや、膵臓のβ細胞だけ時計が止まったようなネズミを作りました。そして変化を見ていくと「インスリン」の分泌がおかしくなり、糖尿病のようになってしまったそうです。

この実験をヒトに置き換えると、体内リズムの乱れによって「インスリン」の分泌が不安定になってしまう可能性があります。その結果、肥満や糖尿病といった「生活習慣病」のリスクが増加すると考えられるでしょう。

ホルモンに関わる病気の増加

体内時計の制御には、ホルモンの分泌が非常に深く関わっています。

例えば男性ホルモンの場合、最も活性化しやすいのは朝です。女性ホルモンについても体内時計を制御していて、排卵するタイミングは決まっているといわれています。

体内時計が乱れるとホルモン分泌がおかしくなり、癌化の問題が出てしまうのです。そのためシフト勤務や極端な夜型の方は、乳がんや前立腺がんなどのリスクが高い傾向にあります。

鬱や統合失調症のリスク増加

イギリスの大規模な調査では、体内時計が夜型の方は鬱や統合失調症のリスクが高まることが明らかになりました。

体内時計が朝型の方は、夜型の方に比べて鬱や統合失調症のリスクが3〜4割低かったそうです。夜型は精神衛生上もあまりよくないので、できれば体内時計のリズムを整えて朝〜昼型にしていくとよいでしょう。

勉強や仕事のパフォーマンス低下

体内時計が夜型の方は、成績が悪いという調査結果も出ています。

なぜなら、テストは午前中〜夕方くらいまでに行われることが多いからです。夜8〜9時にテストが行われれば少しは有利かもしれませんが、一般的には朝〜昼に行われるため成績は悪くなります。

さらに夜型の方は、朝〜夕方に仕事をする場合もパフォーマンスを発揮できません。

つまり朝〜昼型の一般的な社会生活を送る場合、夜型は非常に不利になりやすいということです。

体内時計をリセットする朝食の摂り方とは?

あなたは朝食をどれくらいの時間帯にとっていますか?

朝起きたらまずはお化粧、お弁当を作って、家族に食べさせて、送り出して……ご自身の朝食にありつけるのは、起床後3〜4時間ほど経っているという方もいらっしゃるのでは。また、忙しくて朝食をゆっくり食べられない方も多いと思います。

実は、そのような朝食の摂り方がもっとも身体の負担になってしまうんです。

起床後すぐに朝食をとる

体内時計を整えるためには、起床後すぐに炭水化物やタンパク質を中心とした朝食を摂るのが効果的です。

忙しいかもしれませんが、朝の支度をしながらご自身でもパクパク食べるとよいでしょう。すると「末梢時計」が朝を感知して体内時計をリセットし、身体が活動を始めます。

しかし朝食を食べる時間が遅くなると「朝食を抜いた」ような状態になり、体内時計が後ろの方にズレてしまうんです。

柴田教授のチームではネズミを使い、朝食の時間を遅らせて時計遺伝子の発現を確認する実験を行いました。すると、朝食が3時間ほど遅れただけでも体内時計が後ろにズレて、ピークが夜型に向かってしまったそうです。

ヒトに置き換えると、朝7時に電気をつけて「脳の時計」が起きても、朝食をとらなければ「末梢時計」が動きません。すると体温が上がらず、交感神経も活性化しないので、朝から調子が出ないのです。

学生でいうと1限目はぼーっとしてしまい、2限目になってようやく調子が出てきます。社会人で考えると、朝のうちは出社しているのに仕事効率が上がらない「プレゼンティズム」という状態になってしまうでしょう。

朝食を抜くのもNG

忙しいからと言って、朝食を抜くのも体内時計の乱れにつながるので注意が必要です。

ヨーロッパで行われたヒトの調査によると、朝食を抜くことで体内時計が1〜1.5時間ほど遅れてしまうことが分かりました。

この調査の対象者は、朝7時に起床して夜の23時に就寝する方です。この方にはまず、2週間ほど朝7時・昼12時・夕方17時に食事をとってもらいました。

次の2週間は、同一人物が朝食を抜いて昼12時・夕方17時・夜22時に食事を摂らせたそうです。起床や就寝、光の環境は全く変えずに食事の時間だけ5時間ズラしました。

そして2週間後、メラトニンの分泌から「脳の時計」を調べると、食事の時間を遅らせても「脳の時計」は全く変わりませんでした。ところが皮下脂肪を切り出して時計遺伝子の発現を見ると、「末梢時計」は1〜1.5時間遅れていたのです。

ここでもう1つ注目したいのが、食事を5時間ずらしたのに、体内時計が5時間遅れなかったというポイント。

「末梢時計」は5時間後から働き始めたい一方で、光によって「脳の時計」は覚醒しています。脳が末梢に対して覚醒させようと司令を出すため、結局1〜1.5時間くらい遅れたところで折り合いをつけて「末梢時計」が働き始めるようです。

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現段階では「食べるタイミング」を指定できない

「時間栄養学」で食事(栄養)と体内時計の相関性が明らかにされる一方、消費者庁では食品に対して「食べる(飲む)タイミング」を指定してはいけないと定めています

これは機能性表示食品や、特保(特定保健用食品)でも同様です。薬品なら服用時間を指定できますが、食品を摂る時間を表記できません。

しかし「時間栄養学」の視点から見ると、このルールには矛盾が生じています

例えば「DHA・EPA」は魚の有効成分で、薬品にしたものは服用時間を指定できます。しかし食事として魚を食べても、薬と同様の機能が得られるんです。

また「ガンマオリザノール」という薬がありますが、これは米ぬかから作られた油です。日頃から米ぬか油を使用している人は、「ガンマオリザノール」を服用したときと同じような機能を得られます。

もっと広い視点で見ていくと、朝・昼・夕の食べる時間でも体内時計への影響は変わります。そう考えると、食品に対して「食べる(飲む)タイミング」を指定できないのはおかしいのです。

今後「時間栄養学」の研究が進んでいけば、消費者庁からの指示も変わるかもしれませんね。

「時間栄養学」は食事・栄養が体内時計に影響することを研究する学問

さまざまな研究から、食事や栄養が体内時計に影響することが分かり始めました。

体内時計が整うと、心と身体の調子がよくなります肥満が軽減されたり筋力がアップしたり睡眠改善につながることで、学生なら成績が上がり、社会人なら仕事や活動のパフォーマンスが向上するでしょう。

体内時計を整えるためには、まずは規則正しい生活リズムと朝食をしっかり食べることがポイントです。朝食の内容は脂質を少なくし、炭水化物やタンパク質を中心としたメニューが効果的ということが分かっています。

これから「時間栄養学」の研究が進めば、私たちはもっと効率よく健康になる方法が分かるはずです。これからも「時間栄養学」に注目しながら食事を楽しみ、より元気ハツラツと活動できる身体をめざしましょう!

この記事でわかったこと

時間栄養学とは食事(栄養)と体内時計の相関性を研究する学問
体内時計が乱れると心と体にさまざまな不調が起こりやすくなる
朝食によって体内時計がリセットされるため、遅れたり欠食したりせず早めに食べることが大切

最終更新日:2022.09.27

この記事の監修者

柴田重信教授

早稲田大学先進理工学部 電気・情報生命工学科 教授

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