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腸内細菌と免疫力の関係って?腸を整えると感染症を予防できる?

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「新型ウイルスに感染したくない!」「重症化や後遺症が心配……」「2度目の感染もあるんだって!」など、不安な毎日が続きますよね。実は今、先端の研究では免疫力アップの方法として「腸内細菌」が再注目されているんです。

この記事では、京都府立医科大学の内藤裕二先生に「腸内細菌と免疫力」という先端の研究情報をお話していただきました。

この記事でわかること

腸内細菌と免疫力はどうして関係するの?
今話題の「酪酸産生菌」ってどんなもの?
免疫力を高めるにはどうすればいい?

腸内細菌と免疫力の関係

新型ウイルス感染症が広がる中で、免疫力の研究が急速に進められました。その中で、腸内細菌が免疫力と関係することが分かってきたのです。

免疫グロブリン「IgA」がウイルスを排除する

少し専門的なお話ですが、消化器官の免疫についてちょっと確認してみましょう。

消化管の粘膜面では、病原体が入ってきたときに免疫グロブリン「IgA」が主体となって感染を防いでいます。免疫グロブリンとは、抗体としての働きを持つタンパク質です。血液や組織液の中に存在しており、全身に分布してウイルスや細菌から身体を守っています。

免疫グロブリンには「IgG、IgA、IgM、IgD、IgE」と5種類のクラスがあり、中でも「IgA」はウイルス感染抑制に大きな役割を果たしている抗体です。「IgA」が働くことで、身体の中にウイルスや細菌が侵入してくるのを防いでいます。

日本人はウイルス感染に対する免疫力が高い?

新型のウイルス感染症の流行が始まった2020年春頃、アメリカでは多くの感染者数が出ていました。しかし同時期、日本ではそれほど感染者数は多くならなかったのです。

内藤先生は外出制限がかかりだした当時、これまでの研究データを改めて確認し、ほとんどの日本人が「IgA」を分泌できることに気づきました。対して、欧米人は「IgA」を分泌できない人が多いということに気づいたのです!

このことから、内藤先生は「日本人はIgAによってウイルス感染自体を未然に防いでいるのではないか」という視点で論文を発表されてます。すると論文の内容はあっという間に広がり、関連研究がどんどん進められました。

免疫力に関与する「酪酸産生菌」

内藤先生の研究チームでは、新型のウイルス感染症が拡大する前から健康長寿について調査を進めていました。その中で、健康長寿には「酪酸産生菌」が役立つ、というところまでは分かってきたそうです。

さらに新型ウイルス感染症の感染拡大が広がり、それに伴う免疫研究が進められる中で「酪酸産生菌」の働きが免疫力にも関連することが認められはじめています。

酪酸産生菌とは

「酪酸産生菌」とは、「酪酸」を作り出す腸内細菌のことです。「酪酸」とは短鎖脂肪酸の一種で、主に腸粘膜上皮のエネルギー源として使われます。

腸粘膜の上皮には「腸管粘膜バリア」があり、感染症を防ぐ働きがあります。さらに水やミネラルを吸収するためのエネルギーとしても使われるため、「酪酸」は感染症予防や健康のために大変重要な役割を果たしていると考えられるでしょう。

新型コロナウイルスは腸に感染する

新型コロナウイルス感染症というと、肺に感染するイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?

実は、内藤先生はインフルエンザウイルスが腸に感染することを世界で始めて発見されました。

インフルエンザウイルスと同様に、新型ウイルスも腸に感染する可能性があります。腸へのウイルス感染が腸内環境に影響し、症状を重症化させているかもしれないのです。

重症化する人は「酪酸産生菌」が減っていた

新型ウイルスの感染拡大が起こる中、海外の研究者が腸内細菌に関する驚くべきデータを発表しました。

なんと、新型ウイルスに感染して重症化している方の腸内細菌を調べると「酪酸産生菌」が減少していたという事実です。

さらに、新型ウイルスの後遺症に悩む方の腸内細菌を調べても「酪酸産生菌」の減少が見られました。このことから、やはり「酪酸産生菌」が新型ウイルスの感染予防や重症化予防に関係しているといえそうです。

腸内環境を整えて免疫力を上げる方法

新型ウイルス感染症に抗って健康を維持するためには、腸内環境を整えて免疫力を上げることが大切です。

腸内環境を整えるとウイルスに感染しにくくなるだけでなく、重症化や後遺症も防ぎやすくなります。基本的な生活習慣と食事内容を改善して、良い腸内細菌を育てていきましょう。

生活のリズムを整える

腸内環境が良好な方を調査すると、ほとんどの方は生活習慣が整っています。

起床時間や食事の時間、就寝時間が一定でリズムよく生活しているようです。夜ふかしをしたり、それによって起床時間や食事時間がズレたりすることはありませんでした。

みなさんはSNSや動画に夢中になって、寝不足になってしまうことはありませんか?忙しくてつい食事を抜いてしまったり、我慢できずに間食してしまったり……そのようなちょっとした行動の積み重ねが、生活習慣の乱れにつながります。

休みだからといって夜ふかししたり、朝寝坊したりするのもあまり良くない行為です。これからは平日・休日問わず、一定のリズムで生活するように心がけてみてくださいね。

植物由来の食事を心がける

日本人が免疫グロブリン「IgA」をしっかり分泌できるのは、健康的な日本食を長きに渡って食べてきたからではないかと内藤先生は考察しています。

健康的な日本食とは、植物由来の食べ物を中心としたメニューです。動物性のお肉は少なく、タンパク源は豆類や魚を中心にバランスよく摂り入れます。

間食はほとんどなく、甘いものを食べるのは誕生日や記念日のみ。1日2〜3回の食事を規則正しく摂る生活を長く続けてきたことで、私たちは感染症に強い遺伝子を形成されたのではないかと考えられるのです。

これから研究が進んでいけば、「IgA」を増やす「ヨーグルト」「サプリメント」などが出てくるかもしれません。ですが現段階では、植物由来の食べ物を中心とした日本食を食べるのが良いと考えられるでしょう。

習慣的に身体を動かす

腸内環境を整えるためには、習慣的に身体を動かすことも大切です。

日常生活の中で、少し身体を動かすように意識してみてください。「車を使わない」「階段を使う」など、ちょっとした積み重ねが活動量アップにつながります。

運動が好きな方であれば、簡単なエクササイズに取り組んでみるのもおすすめです。意識的に運動をするなら、足腰の筋肉を鍛えられるようなメニューに取り組んでみてください。

適度な運動習慣は腸内環境を整えるだけでなく、筋肉が鍛えられて「サルコペニア」「フレイル」などの予防にもつながります。感染症予防はもちろん、健康寿命を伸ばすことにもつながるので、ぜひ楽しみながら活動量を上げてみましょう。

腸内環境には「地中海食」が良い?

日本古来の食事が腸内環境によいことは、日本人なら多くの方が知っているはず。実は、世界では日本食に匹敵するほど「腸内環境によい」とされている食事があるんです。

世界的には地中海食が注目されている

日本では「日本食」が良いとされますが、世界的には「地中海食」が腸内環境に良いと研究が進んできています。

地中海食はかなりの確率で腸内環境に好影響を与えていると考えられており、動脈硬化の改善にも効果が期待できるそうです。

地中海食とは、1950年代のスペイン・ギリシャ・イタリアの伝統的な食事様式のこと。野菜・豆類・果実・オリーブオイル・パン・パスタ・その他穀物類と少量の肉・魚から構成されます。

基本的には豚肉などの動物性タンパク質も使われるのですが、近年では「グリーンベースの地中海食」が考案されました。「グリーンベースの地中海食」とは肉類を使用せず、植物由来の食材のみを使用したものです。

「グリーンベースの地中海食」はとくに腸内環境によく、脂肪肝の改善にも効果があるといわれています。

日本人には日本食が合っている?

内藤先生はそんな地中海食の食習慣も評価された上で、ただし「日本人には日本食の方が、より合っているのではないか?」と考察されています。

地中海食の中でも、オリーブオイルが健康に良いことは広く知られていますが、日本人の身体に本当に合っているかどうかの結論は、まだまだ出ていないそうです。

日本人は日本人らしく、「米油」や「なたね油」の方が合っているのかもしれません。

トレンドの健康法に合わせて偏ることはなく、確実に腸内環境に悪いと判明していること(動物性脂肪や糖・塩分摂りすぎなど)は避けて、さまざまな食事を楽しみましょう。

できるだけ日本古来の食生活を意識して、ご自身やご家族の体調に合う食事を見つけていくことが大事です。

腸内細菌を整えて免疫力を高めよう!

良い腸内環境を保って、健康を維持することは一生ものの大切なライフスタイルなのです。

しかし、腸内環境改善は1日や2日では整わないので、決して簡単なことでもありません。また加齢によって、腸内環境も随時かわっていきます。

齢を重ねながらもご自身の体質に合った方法を見つけ出し、継続的にやり続けていくことがとても大切です。

腸内細菌を整えていくことで、免疫力アップが高まり感染症に罹りにくくなります。さらに美容へのメリットや健康長寿にもつながるので、これからも自分に合った方法を考えながら気長に取り組んでみてくださいね!

この記事でわかったこと

消化管に存在する「IgA」という抗体がウイルス感染抑制をサポートしている可能性が高い!
ウイルスは腸に感染する!「酪酸産生菌」は新型ウイルスの感染予防や重症化予防に関係している
腸内環境を整えて免疫力を上げるヒントは、古くからの日本人らしい生活が鍵

この記事を動画で見たい方はこちら

最終更新日:2022.09.11

この記事の監修者

内藤裕二先生

・京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授
[専門]腸内微生物叢/抗加齢医学/消化器病学

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